爽やかな青空を眺めながら私は教室の窓に頬杖をついてた。
もうすぐ春も終わって梅雨の時期。雨が大嫌いな私にはあまり嬉しくない季節だったりする。

髪、広がるからやなんだよなぁ。

私は胸のあたりまで伸ばしたストレートの髪をくるくると指で捻る。

「歌夜、またボーっとしてんのか?」

背後から葵の声がした。私の隣で同じように頬杖をついて、ニッと笑う。

「また悩み事?」

「ん~?悩みといえば悩み、かな」

「なになに?話してみな!葵さんが聞いてやるから」

ポンと胸を叩いて言う葵を見て、私は自然と笑ってしまった。
こんなこと、葵に話してもきっと解決はしないんだけど。

そう心の奥で思いながらも、話すことにした。せっかく葵が聞いてくれるんなら、その好意に甘えてみようかと思ったんだ。

「あのさ……」





「へぇ~、ドラマー探し?!」

「うん、この前のライブでさ、スゴく上手いドラム叩く人見つけたんだけどね、その人別のバンドで叩いててさ」

目の前を横切るスズメを目で追いながら私は説明する。

あの日、BLACK NOISEでドラムを叩いてた人は、あろうことかバンドリーダーだった。リーダーやってる人にバンドやめてPRISONERに入れ、な~んてさすがに言えるわけないし。

私と海斗はすっかり落ち込んでた。
あの衝撃、もう二度と味わえないのかな。

「そっか、他のバンドの人だったのかぁ。でもまあ無理に焦って探す必要ないんじゃない?」

葵は人差し指を立て、私を見る。

「そういうのはね、きっと向こうから寄ってくるから、さ」

どういう意味だろう、と聞き返そうと思った時、キンコンと授業開始のゴングが鳴り響いた。

私の大っ嫌いな数学の始まりだった……。