わかってんじゃん。
不意にそんな声が聞こえた気がして、隣のゴスロリくんを見つめた。
「ん?どうしました?」
キョトンとして私を見つめる丸い目がそこにあった。
気のせい、か。
私は笑顔を作って首を振った。
「ん、何もないよ。さ、君も早くあっちに行きなよ!海斗たちの歌、聴いてきて」
「あ、はい。じゃあ……」
「ん、ありがとね。元気出た」
「いえ、ほんとに気を付けてくださいね、歌夜さん」
そう言って彼は立ち上がり、スカートの裾を払いながらファンの輪へ加わっていった。
その姿を目で追いながら、少しだけ軽くなった気分に気付く。
いい子だなぁ~、ゴスロリくん。
あらためてそう思った私だった。