私は海斗たちが路上ライブしてるのを後ろから見てた。
それが私のお願い。

とりあえずコンビニで氷を買ってきて、右手を冷やしながら彼らの演奏する姿を見つめる。
どうしてもあのまま帰りたくなくてワガママを言った。

悔しい……。

私は海斗たちの歌う姿を見ながら一人、歯がゆい思いで木の根元にしゃがみこんでた。

集まってくる女の子たちをぼんやりと眺めていたら、さっき私にコーヒーかけた女の顔を見つけた。思わず、頬が熱くなって彼女を睨んでしまう。

そしたら向こうも私に気付いて、ニヤリとイヤらしい笑みを浮かべた。

……っ、まじムカつく!!

プイッと私はそっぽを向いて彼女の方を見ないようにした。でないと今にも掴みかかってしまいそうだったから。

私は海斗の歌声と紅志のギターを聴きながら、でも……と考えてた。

ずっと前から海斗たちの歌を聴きに来てた子達から見たら、私はきっと邪魔な存在なんだろうなぁ。

そう思ったら不意に胸がキュッと苦しくなった。

早く、もっと巧くなりたい。

悔しくて涙が出てきそうだった。
唇を噛んで曇った空を見上げる。熱くなった目元から涙がこぼれないように。

女だからって文句言われなくなるくらい上手になってやる!決めた!今日からもっと練習してやるんだから!
見てろよ、バカ女ども!

私は心の中で拳を握った。