紅志の知り合いのバンドマンがライブイベントをするのに出演者を探しているらしくって、そこに私たちPRISONERを出してくれるというのだ。

でも、私たちのバンドにはまだドラマーがいない。やっぱりライブやるならドラムも打ち込みじゃなくて生がいい。

でも……あと2週間で見つかるのか?!つーか、いたとしても曲叩けるようになる時間あるのか?!

そんな疑問が浮かぶ。

「まあ……探すしかないわな。一応俺の昔のバンド仲間とか知り合いに当たってっから」

紅志はゆっくりと煙草の煙を吐き出し、目を細める。難しい顔だ。

「わ、私も聞いてみますね!心当たりはない、けど……」

慌ててそう言う私を見て、紅志はふっと笑った。

「無理すんな、そんなに都合よくいい奴が見つかるなんて思ってないから。いなきゃその日は打ち込みでやればいい。だろ?」

最後に目線を海斗に向けると、いつの間にか私の背後に立ってた海斗が。

「そうそう、俺たち3人だけでも十分いけるって!ね?」

私の肩をポンと叩いて言った。

「まあ、そうかもしんないけど、さ」

それでもやっぱりドラム欲しいよ、と口を尖らせた私に海斗が言う。

「それにしても歌夜って覚えが早いよな~、もう俺らの曲ほとんど弾けるんだろ?」

ソファに座って、メイクを落としながら私の顔を見る彼。やっといつもの爽やか青年に戻りつつある海斗の言葉に私はちょっと照れながら言い返す。

「そ、そうかな?まだまだだよ、私なんて」

二人についていくので必死なだけ。早く覚えなきゃ、って焦る私がいる。だからそうやって誉められると恥ずかしい。
私はとっさに後ろを向いてしまった。顔が熱い。

「あ!もしかして照れちゃってんの!?か~わいい~」

ニヤニヤ顔でからかってくる海斗。

……むかっ!

私は海斗に向かって中指を立ててやった。

「うわっ!女の子がそんなことしないの!」

「うっさい!やらせてんのはあんたじゃ!」

また始まってしまった海斗と私の痴話喧嘩?!それには見向きもせずに、再びギターをジャカジャカやり始めてしまった紅志。
練習になんない……てか私、この話始まってから一回も練習してなくね?!