放課後、私はいつも通り手早くカバンにノートや教科書なんかをしまい込み、教室を飛び出した。
今日は金曜日。明日はまた路上ライブをする日だから、海斗の家で練習だ。靴を履くのももどかしく、私は正門には向かわず校舎の裏に回った。

裏門のが海斗んちに近いんだよね~。

つい最近知ったんだけど、海斗たちはこの高校の卒業生だったらしい。
私が1年生の時、彼らは3年生だったわけ。

なんで気づかなかったんだろう、もったいないことした~。なんてぼんやり思いながら小走りに校舎裏を急いだ。
後少しで裏門に辿り着く、というその時だった。

ドカッ。

「ぐっ!」

なに?今の……。

私は思わず足を止めて視線を巡らせていた。
校舎裏の、焼却炉のある方から聞こえたその声。私は思わずそっちへ足を向けていた。
壁に隠れながらそっと声のした方を覗いてみると……。

「うわ……」

校舎に寄りかかってお腹を押さえてる一人の男子生徒と、それを囲む4人の生徒たち。女の子も一人だけいた。

「ほんと、女みたいな顔してキモいんだよ、オマエ」
 
あろうことか4人の中で唯一の女子生徒が口を開く。後ろからじゃあまり分かんないけど黒髪で肩までのボブヘアの子。

そして傍らにいた一番背の高い男子生徒が足蹴りを壁を背に俯いている子の太股に当てた。笑いながら。

い、いじめ?!リンチ?!しかも今時、校舎裏でシメるって……有り得ないっしょ!?

私はちょっと古いヤンキー映画を観てるような気分になった、けど!

許せない!私はイジメってやつがこの世で一番嫌いなんだよね!!

グッと拳を握りしめた私は、ゆっくりと足を踏み出していた。