「ねぇ、今日聴いてくれてた人達の中に一人だけ浮いてる子いなかった?」
帰り支度をし始めた私は、二人に声を掛けた。それに対して海斗が答える。
「いたいた!めちゃくちゃ可愛いゴスロリの子だろ?」
「そうそう!すごく可愛かった~!でもあの子だけなんか他の子達と違う感じで私達のこと見てなかった?」
私は彼女を見た違和感を口にした。
「そうか?普通だったような……」
首を傾げる海斗の隣で相変わらず煙草に火をつける紅志にも私は答えを求める。
「確かに、ちょっと雰囲気は違ってたな。それに……」
煙を吐き出しながら、言いよどむ。
「それに、なに?」
私と海斗が同時に首を傾げる。
「あいつ、……男だったぜ」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
持ってたベースを落としそうになりながら、紅志に詰め寄った私。
「ま、マジで男だった?!」
「あ、あぁ……なんとなく、勘だけど」
いきなりどアップになった私の顔から逃げるように体を少し引きながら、紅志が答えた。
「そんなぁ~あの子めちゃくちゃ可愛かったのに!?紅志の勘違いじゃねぇの?」
「そうだよ!きっと岡崎さんの見間違いだよ!」
そう言って私たちが楽器の片付けもせずにギャーギャー言い合ってると、背後から声を掛けられた。
「あ、あの……」
か細い声に振り返った私。そこにあった顔に、目を見張る。
「あ……。あっ、あ~っ!!」
「何だよウルサいなぁ歌夜、静かに……って、あ~~っ!!」