「馬鹿だよな~歌夜、あんたがバンド辞める必要なんてどこにもないんだよ?」
私があのライブ後の事を話したとき、呆れ顔で葵はそう言った。
葵の言うとおりかもしれない、とは思う。けど、私にはあそこに居ていい理由が見つからなくて。それよりも辞めるべきだっていう理由ばかりが頭に思い浮かんで。
「だってこれ以上迷惑かけらんないし……」
少しだけ目線を上げて葵を見れば、いつものクールな表情のまま彼女は即座に口を開く。
「誰が迷惑だ、なんて言ったのさ?ん?あんたの腕、それは岡崎さんのファンが逆恨みでやったことだろ?岡崎さんが原因だって私が言ったらどう思う?」
「それはないよ!岡崎さんは全然悪くない!」
私はガバッと起き上がって強く言い返した。そしたら葵は、だろ?って呟いて頷く。
「それと同じ。きっと岡崎さんたちも歌夜と同じこと思うんじゃないの?だからさ、歌夜はもう一度バンドに戻っていいと思うんだけどな、私は」
そう告げた葵は私の両頬をムニッとつねってから椅子から立ち上がった。
「さ、終業式始まるよ、行こう!」
爽やかな笑顔で言う葵に、私もゆっくりと席を立って廊下へ向かった。