私は紅志の顔を一度見上げてから、ゴクリと唾を飲み込んだ。

……言わなきゃ。

ライブが終わってから、ずっと考えていたことを伝えようと、私は口を開いた。

けど。
ふと、アキトさんに言われた言葉が頭に浮かんだ。

『バカなこと……』

バカなこと、なのかもしれない。でも、このままじゃ状況は良くなるどころか悪くなる一方なんじゃない?

私は頭の中でぐるぐる考えて、やがて出した答えを口にするのを一瞬だけ躊躇った。

「歌夜?」

怪訝な顔で私を見つめる海斗達をジッと見つめ返して、やっぱり、と思う。

例えバカなことだったとしても。私はもう……。

決めたんだ。

私はブルブルとかぶりを振ってから、もう一度口を開いた。