「―……ちゃん?歌夜ちゃん?」

ん?

名前を呼ばれる声に、ハッと我に返った。

気付けば目の前にアキトさんのどアップ。

「……っっ!!ひょえぇぇ~っっ!!」

驚いて奇声をあげてしまった私の口を、近くにいた紅志が慌てて塞いだ。

「ばか!変な声出すなっ!!」

「あい……ふぃまひぇん……」

口を押さえられたままの私は、フガフガと答えた。それを見て、アキトさんはプッと吹き出した。

「アッハハハ……!やっぱり面白いなぁキミ!」

「はぁ……そうですか……」

と答えてから私は気付いた。

「え!?あれ?アキトさんたち、ライブは?!」

キョロキョロと周りを見回すと、いつの間にかステージの上では片付けが始まっていて、オーディエンスの子たちの姿もすでにまばら。

「終わったぞ、とっくに」

紅志が呆れた声で私に答えてくれた。

「え?!うそ~っ!!……ショック」


がっくり落ち込む私の肩を、アキトさんがポンポンと優しく叩いて、意外な一言を私の耳元に、告げた。

「バカなこと、考えてたでしょ?」