私の涙に、紅志の目が見開かれた。
慌てた様子で私の頭を撫でてくれたのがわかったけど、その手の感触に、私の涙腺はさらに崩壊。
目の前が見えなくなった。
もちろん、私たちの様子に、他のバンドやスタッフが気付かないはずない。
どうしたんだ、とか大丈夫か、って声がチラホラと聞こえてきた。
そんな中、それまで床にしゃがみこんでいた海斗がゆらりと立ち上がった。
そして、私達の顔を順に見回して弱々しい笑顔を浮かべた。
いつもの海斗らしくない、力ない微笑み。何かを諦めたような。
そう感じた私や、紅志、珪甫を一人ずつ見回してから海斗は口を開いた。
「諦めようか、今日は」
そんな台詞を、きっぱりと海斗は言い放った。