「やめとけ」
低い、低い押し殺した声。掴まれた右手首が少し痛い、けど。
「なんで?!これやったのアイツに決まってんじゃん!?私もう我慢できないよ!!」
あぁ、やべぇ。あんなに泣かないって決めたのに。もう泣きそう。
熱くなる目頭を左手で一度押さえてから、私の手を掴んでる紅志の顔をやっと見上げた。
そこにあった彼の顔に、息が止まる。
泣きそうな、顔してる。
「アイツにつかみかかってどうする?そしたらギターが元に戻るか?」
「それは……」
怒りよりも悲しみの色に染まってる紅志の瞳を目の前に、私は何も言えなくなってしまった。
私の、せいだよね。今日までのこの嫌がらせ。
珪甫の手首も、私の腕も、紅志のギターも。
私が、敦士に目、つけられたから。
私が、紅志と付き合ったりしたから。
私が全部……いけないんだ。
堪えられなくて、どうしようもなくて、涙が零れてしまった。
泣くもんか、って決めてたのに……。