「マジないってコレは……」
力なく珪甫が呟いた、気がした。
控え室の片隅にあったギター。
他の人達もきっとSakuraのライブに気を取られていたから、誰が近づいてもわかんなかっただろう……。
私、頭がついていけてなくて、ただ立ち尽くすしかなかったんだけど。
誰がやったかなんて、そんなの分かりきったことだと思った。
そして、ギターから何気なく目を離した私の視界に、アイツの顔が映った。
少し離れた所から、口元に笑みを浮かべ視線だけこっちを見てる敦士。
「……最っ低……」
ギリッ、と唇を噛んだ。強く噛みすぎて、血の味が広がった。
我慢できない!!
私は持ってた自分のバッグを床に叩きつけて、アイツの方へ踏み出してた。
ぶん殴ってやる!
頭に血が上って、周りが見えてなかった私。
そんな私の腕が、不意に引っ張られた。