「お前らの音で、俺の声、最高の場所まで連れてってよ、ね?」

片目を爽やかに閉じて見せ、久々に天使の笑顔。

あぁ……ズルイなぁ、この人。
この顔見るだけで心配事が吹き飛んじゃうよ。

「ってかいつまで触ってんのさ、離してよ」

私が感心してると隣の珪甫が、ペチッと海斗の手のひらを払いのけていた。

「いて!もぉ、ケイ冷たいなぁ」

「べたべた触られるの嫌いなんですけど」

「いいじゃん仲間なんだしぃ」

「いーやーだ」

「あ!もしかして照れてんの?ん?正直に言ってみ?」

「じゃあ言ってやる。寄るな、触るな、視界に入るな、てかむしろ俺を視界に入れんな」

「…………紅志ぃ!!」

いつも思うけど、ライブ前なのになんでこの人は緊張感の欠片もないんだろうか。

私はコントみたいな会話を繰り広げる海斗達を笑いながらも、再びステージに目を戻していた……。

どうしたらあんな凄いステージ、作れるんだろうと思いながら。