「ひぃ~!殴られるかと思ったよ~!怖かったよ紅志ぃ~!!」
情けない顔をしてガバッと座ってる紅志にしがみついた。
エェ~~ッ!?
「いてっ!!?抱きつくなバカ!」
「だって怖かったんだもんアイツ~!」
わざとらしく猫なで声を出す海斗の顔を、紅志は手のひらで押し返す。
いや、怖かったのはアンタだってば。
きっと海斗は気まずくなりそうな雰囲気を察してふざけたんだろうけど。
でも!!
「海斗ズルい!自分だけ抱きつくなっ!!」
私は的外れな台詞を口にしてた。しかもそれに対して海斗はニンマリ笑みを浮かべて勝ち誇ったように。
「へへん!羨ましかったら歌夜も抱きついてみれば~?」
「なにぃ~!?よし!海斗どいて!」
私が立ち上がって紅志へ向き直ると、肝心の紅志が慌てて両手を私にかざした。
「やめろっ!お前は抱きつかんでいいっ!」
「なんで?!」
「なんでもくそもない!ダメだ!」
心なしか顔が赤く見える紅志に向かって私はさらに近付いた。
「海斗はいいのに私はだめなの?!」
「お、お前は女だろ!?ダメだ!」
「お、男が好きだったの?!え?初耳だよ私!」
「違うわボケ!誰がんなこと言った?!」
顔を真っ赤にした紅志と、納得できない私のボケツッコミは長々と続いた。もちろんその様子を見て、珪甫が深い深い溜め息をついていたのは言うまでもないんだけど。
しばらくは腕の痛みのこと忘れてたんだよね。ホントに。