私は呆れながらも仕方なく英語の意味を教えてやった。

「へぇ~!そっかそっか、そういう意味ね!わかった」

大げさに頷いてみせる海斗だったけど、でもさ、と付け加えて私と紅志を見た。

「なんで“声”の虜なの?俺らはバンドって形で音楽をやるんだろ?だったら声にだけ拘るのはおかしいんじゃない?」

意外にも真剣な表情で話す海斗を見て、私は面食らった。

あ、真面目だ……。

「ん~まあそうだな」

「でも、海斗はボーカルでバンドの顔なんだし。実際その歌声は凄いんだし……」

顎に手を当て考える紅志の言葉を遮るように、私は言葉を紡ぐ。けど、海斗は更に言いつのった。

「でもね、バンドなんだから、紅志のギターと歌夜のベース、そんで俺のボーカル全部そろわなきゃ。その3人の音楽の虜になってもらうのが最高。だろ?いくら俺ひとりの声があったって、バンドはできないんだからさ」

キラキラした瞳で語る海斗の顔を私は口を開けたまま見てた。

確かにその通り。

「でも、でもさ、私なんてまだベース始めたばっかりだよ?下手くそだし……そんなにみんなを感動させられるような技術も自信もない……」

「バーカ!」

ペシ!という音と共にいきなり海斗にデコピンされた。
そしてぐいっと顔を寄せてきた海斗は私に言った。

「俺らがなんで歌夜をメンバーに入れたと思ってんの?」

「え……?」