かっこいい!!
私の目、ハートになってんじゃない?って感じ。
周りの人達も感心した様子で彼を見つめていた。
その時だった。
不意に誰かの手が肩に触れた。
え?
振り返ると真後ろに、黒のハンチングを目深にかぶって、煙草をくわえた男の人がいた。
「ちょっとごめんね」
少し怖い見た目とは違う、柔らかな声が言ったかと思うと、スルリと私の横をすり抜けて輪の中心へと入っていった。
あ、背中にギターケース?
帽子の彼はそのまま歌を歌い続けてる男の人の隣に、違和感なく座り込んだ。
地面に下ろしたケースからはアコースティックギターが現れる。
それを取り出した彼の指は躊躇うことなく、ごく自然に歌声に合わせて動き出した。
「う、わ……」
ギターが鳴りだした途端、彼らの音楽が極彩色のオトになった。
こんな街の片隅で歌ってるのがもったいないんじゃないかっていうくらい、綺麗な声とカッコいいギター。
心臓、一掴みでもってかれそうなくらいだ。
私はただただ立ち尽くすだけだった。