馬鹿にされたとわかったのか、敦士は目をつり上げて座ってる紅志に掴みかかろうとしたんだけど。

「はい、ストップ~!」

二人の間に手を出して止めに入ったのは海斗だった。

笑みを浮かべた表情だけど、鋭い光を瞳に潜ませて敦士を見ている。

「お前らの出番もうすぐだろ~?準備でもしてなよ。うちのギタリストに手ぇ出したら、俺、お前に何すっかわかんないよ?」

に~っこり海斗が笑った。その顔が今までにないくらいの超絶にこやかで。

うわ……っ。めっちゃコワい!!

私と珪甫は思わず顔を見合わせてしまった。

やっぱり海斗、怒らせたら一番ヤバいかも?!

「この……っ!」

敦士が海斗に詰め寄ろうとした時、間延びしたスタッフの、BLACK NOISEを呼ぶ声が控え室に響いた。

チッとあからさまに舌打ちをした敦士は、無言でこっちをひと睨みしてからメンバーの方に向かって立ち去ってしまった。

怒りのオーラをガンガンに出している背中を見送りながら、私はホッと胸をなで下ろした。

「はぁ~、スゴかったね海斗の啖呵」

なんて呟いた私の言葉に、クルリと振り返った海斗は。