やがて時計は六時半を指し、予定通りにライブはスタートした。
一組目の“プラス”が演奏しているのを聴きながら、私は左腕をそっと押さえた。

珪甫が買って来てくれたコールドスプレーのおかげでだいぶ痛みは緩和されたけど。

ちゃんと弾けるかなぁ。

すごく不安だった。

「やっぱり、プラスはあんまりだなぁ」

「だな。音が軽すぎてつまんねぇ」

「キャッチーだけどね、ルックスのおかげで男の子には受け良さそうだよね」

ガタガタ揺れるボロイ椅子に座って、聞こえて来る演奏に、海斗と紅志がブツブツと批評じみた台詞を口にしていた。

「なんか緊張してきた……」

私がボソッと口を開くと、すぐさま海斗がにっこり笑ってこっちを見た。

「平気平気!いつも通りで大丈夫だからさぁ!」

そのいつも通りすら、できるかわかんないよ、なんて言えないや。

私はチラリと隣にいる珪甫の手首を見てから、海斗と紅志の顔を見た。

「なんか……ごめんね。ケイの怪我とか、さ……」