裏口のドアノブに手をかけようとした瞬間だった。
ガチャリと重い扉が開かれて、誰かが入ってきた。逆光で顔が見えなくて、油断した。
「よお、懲りずにまだやってんのかよ、あのクソバンド」
開口一番、最低な言葉。
「……どいてください」
「いい加減折れろよ。あいつらの何がいいんだ?」
「どけって言ってんの!」
「おーこわっ!」
思い切り睨みつけた私をからかうように笑って、“BLACK NOISE”の敦士が横にずれ、ドアの前からどいた。
最低男の顔を見ないように、ドアを開けてそのまま後ろ手に閉めようとした瞬間、小さく、でも確実に私に聞こえるように囁く声。
「ドラマーくんは災難だったよなぁ」
いやらしい忍び笑いと共にバタン、とドアが閉じた。
………っ!!!
怒りのボルテージが一気にマックスまで達して、気付けば私はそのドアを思い切り蹴りつけていた。