―――リハーサルは順調に終わった。
もちろん珪甫は右手を使わずに、だったけど。
「大丈夫だって、本番完璧にやるから。何のために1週間我慢したと思ってんの?」
そう言ってニッと笑った珪甫の手首、包帯がまだ巻いてあったから、傷が目立たないようにリストバンドでそれを隠してた。
それにしたって、彼の腕を切りつけたのが誰だかまだわかってない。
腹が立つけど、珪甫は、もうどうだっていいよって言う。
そんなもんかなぁ?
ステージからはけたあと、私たちは控え室で他のバンドの人たちと挨拶を交わしたり、段取りの確認をしたりしてた。
リハーサル3組目の音が聴こえてくる中、海斗が喉渇いたなぁ~、なんて言い出したから。
「あ、私買ってくるよ!たしか入り口の脇に販売機あったよね!」
そう言って私は財布片手に裏口へと向かった。