それは突然だった。

高2の春、ゴールデンウイークも過ぎたあとの日曜日。フラフラと街に出て歩いていた。

信号待ちでぼーっとしてた私の耳に、それは届いた。

……なに、この声?

雑踏の中すり抜けて、私の耳に聞こえてきたその声。

少し掠れてるけど透明な声。

近くのドラッグストアから流れてくる、大して可愛くもないアイドルたちの、下手くそな歌声を一瞬で消した。

すごく、綺麗な声……。

私は思わずキョロキョロして声の主を捜した。

だけどその時、唐突に声が途切れた。

あれ?やだ、どこ?

信号が青になったのも気にならず、私は流れ出す人混みの中で立ち尽くしていた。

しかし、少しすると再びあの声が聞こえてきた。

……!!あっちだ!

私は広い遊歩道の片隅に目を向けた。
はたしてそこに、声の主はいた。
遊歩道の、小さな木陰になった場所に。

聞いたことのない曲。オリジナルの曲?

近付くと小さな人だかりができていた。
私もその輪に入り、背伸びをしてその顔を覗く。

薄茶の少し長めの髪、大きい瞳、整った顔立ち。
その体のどこからその声が出てくるのかっていうくらいスラッとした体型。

その姿に、私は口をぽかんと開けて見とれてしまった。