――最近、紅志の様子がおかしい。
「歌夜、今のとこちょっとズレた。もう一回やって」
海斗が片手を上げて演奏を止めた。
「ごめん」
私は両手を合わせ、謝った。
もう一度、今やってた部分のフレーズを弾きなおす。どうしてもこの部分が引っかかってしまって難しい。
海斗のはなれで、いつものように私達は集まって練習をしてた。
紅志の作った新しい曲の練習だ。
「岡崎さん、ここどうしてもつまづいちゃって。何がいけないんだろ?」
「ん?」
ソファで隣に座る紅志に問い掛けると、手にしてた自分のギターを置いて、私に手を延ばした。
ん?
延ばされた手の意味が一瞬理解出来なくて、私はその手に自分の手を重ねてしまった。反射的に。
次の瞬間。
「……っ?!」
驚いた顔をした紅志、私の手から逃げるように、手のひらを引っ込めた。
「何やってんの、歌夜?紅志はベースを渡して欲しかったんだぞ?」
「へ?!マジっすか?ごめんなさい岡崎さんっ!」
海斗の苦笑しながらのツッコミに、私は慌ててベースを紅志に差し出した。それを受け取る紅志。
やっぱり……私の目を見ない。
なんか近頃、私は紅志に避けられてる気がする。
その理由がわからくて、なんとなく胸がモヤモヤするんだ。