爽やかで優しい音色の紅志のギター。
小さなライブハウスに広がった。
スタンドマイクにそっと指をかけ、海斗がすうっと深呼吸。
少しかすれた高い声がその喉から紡ぎ出された。
伸びのよい海斗の声は私たちの鼓膜を優しく揺らし、なおかつオーディエンスの心を虜にする。
その証拠に前列の子たちは手のひらを胸にあて、見とれるように海斗を見上げる。
彼女たちはまさに海斗の声の“PRISONER”だ。
私はベースを弾きながらも海斗の声に浸っていた。
その横顔を見ると、気持ち良さそうに歌う海斗の声、バラードになると少し艶を含んでますます聴き惚れてしまう。
あぁ、これ真正面から観てたらマジで悩殺されるよ。
こっそりオーディエンスを観察してたら、見慣れた姿を見つけた。
登?!来てくれてたんだ!
紅志のいる上手側の壁に寄りかかって、真剣な表情で海斗の歌を聴いてるゴスロリ姿の登がいた。
よく見れば住谷あさこの姿もあった。こんな小さなハコの、小さなイベントなのにみんな来てくれるんだ。
嬉しい。嬉しいぞ~っ!
バラードなのに妙ににやけ顔になってしまう私。
ヤバいヤバい、かっこ良くかつセクシーにいかねば!
あ、セクシーってとこがポイントね。