「ありがとー!はいキミの顔、覚えたよ!」

あぁ……バカ。

呆れた私と同じことを思ったのか、珪甫が勝手にカウントを鳴らし始めた。

練習の成果もあってか、それに合わせて自然に指が動いた。
タイミングはぴったり。

ドラムの音に私のベースが乗っかって、紅志のギターが優しくそれを包んだ。

珍しく、私達のライブはバラードから始まった――。