「あ、何でもないです、ホント。すいません」

私は思わず顔を伏せてしまった。見とれてたなんて恥ずかしくて言えない。
そしたら横から……。

「ホント気を付けろよ~、紅志が怪我したらどうすんだよ~」

脳天気な声。

んん?待てよ、ちょ~っと待て、なんで私……。

あ、思い出した。

「てか、元はといえばお前が悪いんだろが!なに人の胸覗いてんのさ!」

私は海斗の胸倉をガッと掴んでた。

「しかもいつから人の名前呼び捨てにしてんのよ!?」

私は海斗の顔にぶつかりそうな勢いで近付いて叫ぶ。そしたら海斗はわざとらしい声。

「ひぃ~!!紅志ぃ~、歌夜が恐い~!」

両手で顔を挟んで変な顔をした。

何?その変な顔。

「お前そればっか、飽きた」

岡崎紅志は冷たく切り返した。

紅志、冷た~い、なんて言いながら、海斗は私に胸倉を掴まれたまま視線をこっちに向けた。

「んで?どうする?」

また話が飛んだ。

「どうするって……何が?」

私は怒りの表情を浮かべたまま海斗の問いにまた問いかけ直す。意味が分からない。

「だからさ、バンド。やる?やらない?」

にこり、海斗が爽やか笑顔を見せた。