「ま、俺にとって今はあの二人の音だけが救いだから。ライブに来るな、なんてまた言われたらイヤだしね」
「そんなに好きなんだ、あの二人が」
「まあね。あ、勘違いしないでよ。俺が好きなのは彼らの音楽だから」
そう言ってに、と口角を上げて笑う登。
彼はトレイに乗ってるハンバーガーを再び手に取って食べ始めた。
「まあ、取りあえずは仲直り、ってことで」
「うん、ありがと。まあ、それはいいけど……、ねぇ、それ全部食べるの?」
「悪い?」
思わず引きつった笑いを浮かべた私の目の前、登のトレイの上にはハンバーガー、チーズバーガー、テリヤキバーガー……合計5つのバーガーが山積みなのであった。
うぇ……気持ち悪くなりそう。
思わず目をそらした私。やっぱり中身は男の子なのか?
――20分後。
登のトレイの上には紙屑と紙コップしか残っていなかった。
「あぁ~!食べた食べた!うまかった~!」
「すっげ……。なんでそんなに入るの?」
「え?普通じゃない?これくらい」
「普通じゃないと思うよ、多分」
お前はギャル○根か!?
っていうツッコミを飲み込んで、私は登に質問を一つ。
「なんでその……女の子の格好してるわけ?」
もしかしたら訊いちゃいけないかもって思ったんだけど、どうしても訊きたくて口に出してしまった。
その質問に、登は一瞬面食らったみたいだったけど、意外といやな顔はしなかった。
「うーーん……」
顎に手を添えて考える様子を見ながら、私は付け加える。
「あ、もし話したくないんならいいよ。無理して言わなくってもさ……」