……結局、私は不完全燃焼でその1曲を弾き終えた。
あぁ~最低。メンバーになりたいなんて、なんつー馬鹿なこと言ったの私……。
私は木陰で次の曲を演奏し始めた二人の後ろ姿を恨めしい思いで見つめた。
演奏していて気付かなかったけど、いつの間にか二人の周りには人だかり。
やっぱこの二人は人気なんだ……。
彼らの人気を再確認した私。なんだか急に、さっきこの二人と一曲弾いてしまったことがとんでもなく恥ずかしく思えてきた。
なんか私……きっとここにいる観客から見たら、なんだこの下手くそな奴、って感じだよね。
出来ることならさっさと逃げ帰りたかった。けど、帰りたいって気持ちより聴いてたいって気持ちのが勝ってた。
海斗のこの歌声を聞き逃したくはなかった。
気持ち良さそうに伸びる歌声は、どこまでもどこまでも広がっていく。遥かへ響く声。
初めて逢った。
こんなに惹かれる声を持つ人に。
私、やっぱりこの人と一緒にバンドやりたい!
そう心の中の私が叫んでた。