その日、俺は小さな小さなライブハウスで彼を見つけた。
ステージの上でギターを弾く彼の指から、視線を離すことができなかった。
周りでキャーキャー言う声も、せわしく鳴ってるドラムの音も、ベースの音も。ボーカルの声さえ聞こえていなかった。
ただ、そのギターの音だけが、俺の耳に届いた。
何だよあいつ!?なんであんな音が出せるんだ?!
彼がステージの上に立っている間、俺はずっと彼だけを見て、口をぱっくりと開けたままだった。
そのバンドが袖に引っ込んで、次のバンドが演奏し始めるまでの間、俺はその場に突っ立ったままだった。
おい、どうしたんだよ?と言う友人の声に、やっと我に返った俺は、そいつに掴みかかるようにして、聞いていた。
あいつ!あのギター弾いてた奴、誰?!
あまりの俺の剣幕に、友人は目を丸くした。そして、近くにいた俺の知らない奴に話し掛け、やがてまた俺の隣に戻って来た。
《岡崎紅志》
それが、あのギタリストの名前だった。
俺と岡崎紅志の出会いがそれ。と言っても、向こうは俺のことなんて知らないけど。
その日以来、彼のバンドが出るイベントや、路上でやってるライブはできる限り見に行った。
それくらい、あのギターの音色に、俺はハマっていたんだ。
でも………。