それから十数分後、私はまだ床にくっついたままだった。

「歌夜~、いい加減機嫌なおせよ~、な?」

海斗が私の頭をポンポン叩く。

「うるさい」

ツンツン。鼻を突付かれる。

「やめてよ」

むにぃ~。
ほっぺを両手で引っ張られた。

「はははっ!おもしれぇ!」

「……っ、やめんかぁ~っ!!」

私はスタジオの隅っこから立ち上がって、海斗に向かって手のひらを振り上げた。

それを見て、海斗は慌てて逃げ出し、よりによって紅志の背後に隠れやがった!!

うわ!卑怯!!

「そんなとこに隠れるなんてズルい!!卑怯だ!」

「へへ~ん!やってみろ!紅志には攻撃できねぇだろ~っ!」

海斗は舌を出しながら紅志の背中から顔を出したり引っ込めたり。

なんていうか……ガキだ、小学生並みの!

「う~、くっそぅ!」

地団太を踏む私。すると紅志が落ち着いた声でひとこと。

「歌夜、ベース忘れたのは俺も悪い。勘弁してくれ」

「はい!!」

鶴の一声。

「えぇ~~!!なにこの差別!?」