貸しスタジオはその店の二階にあった。
店長さんらしきオジサンにどのスタジオかを尋ね、私は海斗と一緒に階段を昇る。
スタジオは4つ。紅志と珪甫がいるはずのCスタジオは一番奥のようだ。
他の3つもガラス窓の向こう側、中に人がいるのが見えたけど防音されてるからか、音はほとんど聴こえない。
ここ、だよね?
《ROOM C》と書かれたプレートのドア。
その黒い扉に触れてみると、少しだけ振動が伝わってきた。私はそっとガラス窓から中を覗いてみた。
「うわ、もう叩いてんじゃん!しかもギター弾いてるし!」
私の頭の上から海斗の声。
そう。珪甫のドラムに紅志のギター、二人でちゃっかり音を合わせてるみたいだった。
何これ、絵的にすごくかっちょイイんですけど!?
「……ズルい」
思わずそんな呟きがもれた。二人で先に合わせちゃうなんて、ズルい。
私も混ざりたい!
我慢できずに私は勢いよく防音扉を押し開けた。