「だから……俺はアンタに早くバンドを抜けてもらいたかった。そしたらあのあさこって女、歌夜がムカつくムカつくって大声で言ってたから、ちょっとけしかけてやった」

クスッと小さく笑った登がボソッと一言付け加えた。

「まさかホントにやるとはね。単純だよね」

その登の言葉が耳を通り抜けていく。有り得ないくらいに私は落ち込んでいた。

こんな、たった一人の高校生に自分の音を否定されただけで。

そんな風に私がうなだれてると、隣で腕組んで聞いてた海斗がその腕を解いて、私の背中にポンポンと優しく触れた。

そして。

「バカだなー、お前」

え?

びっくりして顔を上げた私。だけど海斗が言葉を向けたのは私にじゃなくて、登の方だ。

いきなりバカ呼ばわりされた登は、一瞬目を点にして海斗を見た。