「俺はさ、イジメなんて元々大嫌いで、くだらないと思ってる。
でもさ、俺の友達に少しだけ気の弱い奴がいてね、そいつがこの高校入ってからその標的になっちゃって。
今は不登校なんだけどね」
そこまで話して、登は肩をすくめて苦笑いを浮かべた。
いきなりなんでイジメの話?と私は思いながらも耳を傾ける。隣にいる海斗も黙ったまま彼の話を聞いていた。
「まあ、そいつが学校に来なくなったから、イジメてた奴らは標的がいなくなってつまんないわけ。で、今度はそいつの友達だった俺に白羽の矢が立ったわけ。
ま、俺が標的になってれば、他の奴らに目が向くことはないだろうし?相手にしなきゃいいかと思ってたんだよね。
だけど。
だけどさ、最近いい加減キツくなってきて。
精神的に、ね。
かなり参ってたんだ正直。学校もサボってフラフラしてた。
その時だった。海斗さんと、あのギタリストを見つけた。その歌声聴いた時、なんでかな、少し気分が軽くなった気がして。
それからは時間のあるときはあの場所へ通って、二人の音を聴きに行ってたんだ……」