昔は近くて嬉しかった距離が、今では辛い。
無視して通り過ぎることのできない自分が情けない。


はぁ、と零した溜息は白く色付いて空気の中に溶けていく。


そんなに現実は甘くないって、そのくらい分かってた。…分かってたはずなのに。


俺の気持ちが5年間変わらなかったから向こうもそうだって、勝手に決め付けてた。


バカだ、俺。


次会ったときはきっと、あの子が手に入るって思い込んでた。



ーーーーーもう、何も考えたくない。



図書館へ着くと、いつもの様に創造の世界への扉を開く。
だけど今日はなかなか入り込むことができない。
あの子のことが頭をチラついて仕方ない。


俺の想い続けた5年間は無駄だったのかな、なんて。
考えると、虚しくて。苦しくて。悲しくて。


じゃあ何を得た?と自分に問いかけても、答えは見つからない。
恋愛小説なんて持って、何の答え探してんだってバカバカしくなった俺は、それを閉じた。


帰って、寝よう。


ジーンズのポケットに手を突っ込み自動ドアを抜けると、来たときよりも遥かに冷たい風が頬を殴りつけた。