廊下のベンチに座り、時間を潰していたが、もうすぐ1限目の授業が始まる。重い腰を上げ、教室へと戻る。新学期早々、不安な気持ちを抱いているのは、いい気分ではなかった。

1限目の教科は、大好きな現代文だ。嬉しい。国語系の科目はどの教科も得意だし、大好き。すこし気分を上げながら席につく。

前の席の彼は、前の席の男子と話をしている。周りを見渡すと、他のクラスメート達も楽しそうに話をしていた。
私も隣の席の女の子に話しかけてみる。名前は宮本爽香ちゃん。サバサバとしていてやさしそうなおんなのこだった。良かった、仲良くなれそう。

「俺も混ぜて」
例の彼が話しかけてくる。嫌よ、爽香ちゃんが答えた。言葉では拒否しつつ、顔は楽しそうに笑っている。知り合いなのかな?

知り合いなの?と聞こうとした瞬間、始業のチャイムが鳴った。彼はだるそうに前を向き、爽香ちゃんも教科書を手にしている。タイミングを逃してしまった。

そして、ふと考えた。前の席の彼の名前を知らない。少ししか話していないし苦手タイプだが、席が近いし、知っておきたい。ツンツンと背中に指を伸ばす。んー?と振り返った彼に名前を聞いた。

「緑川たいき。大きな樹って書いて、大樹。よろしくね、未央ちゃん。」
「みっ…未央ちゃん!?」

名前を知られていたことに驚き、更に下の名前で呼ばれたことに驚いた。馴れ馴れしいと思ったが、彼の元々のキャラがそうなんだと考えると、嫌ではなかった。

自己紹介が遅れたが、私の名前は宮崎未央。本が大好きで、あまりうるさいキャラではないと思っている。苦手なタイプは緑川くんのような、おちゃらけたような人とすぐ仲良くなれそうな印象の人。

彼は、言い終えると、再び前を向き、授業へ参加した。今日は、学年が変わって1回目の授業なので、各教科担当の先生の自己紹介らしい。

各教科担当の先生の名前くらいなら、覚えなくても支障は無いので、軽く聞き流す。授業中に質問があれば、先生!と呼べばいいと考えて過ごしてきたからだ。

というわけで、今日1日は私にとって退屈な授業になりそうな予感がする。