━キーンコーンカーンコーン━

朝の会の始まりを告げるチャイムが鳴った。
それぞれ集まっていグループが解散し、自分の席へと戻る。ガタガタと椅子を鳴らし着席する。

「おはようございます。」
開きっぱなしの前の扉から、身長の小さな女性が入ってくる。新しい担任だろうか。随分と若く見える。

予想は当たった。彼女は私達のクラスの担任の先生だった。名前は川嶋佳代子。顧問をしているらしいバスケ部の生徒から、佳代子ちゃんと親しみを込めて呼ばれていた。

下の名前で呼んでいたのは女の子が多かったが、前の席の男子も佳代子ちゃんと呼んでいるようだった。

第一印象は、軽そうな男の子。先生が、今日の予定を話している合間にチャチャを入れる。正直苦手なタイプ。大人しく話が聞けないのかと疑問に思ってしまう。

そんなことを考えていると、先生が教室を出ていった。朝の会が終わったらしい。1限目が始まるまで、あと20分。昨日の夜は寝るのが遅かったから少し眠い。

ぼーっとしていると、前の席の男子に話しかけられた。さっき出てきた苦手なタイプの男子だ。

「なに?」
意識したつもりは無いのだが、冷たい対応になってしまった。これからクラスメートとして1年間共に過ごすことを考え、少し反省する。

春休みの課題をやってきたかどうかの確認だった。どうやら朝の会で、彼が集めることに決まっていたらしい。やってしまった、と私は思った。課題のプリントを家に忘れてきた。

素直に謝り、そのことを伝えると、彼は笑って
「お前、ほんとバカだな!普通忘れる?」と言った。トゲのある言い方では無かったので、それが彼のキャラなんだと思うが、無性にイラッときた。

再度、ごめんねと伝え、教室を出ることにした。課題を忘れた私が悪いことは分かっているが、あの席に居続けるのは居心地が悪い。

彼と仲良くできる気がしない。