いつも透明な一枚の壁を隔てて
本当の君を僕は見たことがない。
紺色のブレザー一色に染められた教室
何の代わり映えもしない一日
キミは僕の前に現れた。
キミは綺麗だった。
真っ黒な髪は墨汁に濡れたような深い輝きを放ち
サラサラと揺れてキミの小さな顔を縁取る。
スラリとして柔らかそうな身体を隠す服は
この教室では異質の白
真っ白なワイシャツはキミの黒い髪をより一層引き立てて
キミが身に付けるだけで、何故か輝いて見えた。
梅雨独特のジメジメとした煩わしい空気
どんよりとした僕の毎日に風を吹かせたのがキミだった。
「隣の県から越してきました。よろしくお願いします」
運命だと思った。
僕がキミを見つけた瞬間
僕は初めて 一目惚れ が本当に存在するのだと知った。
それほどまでに、目が奪われた。
初恋だった。
キミに近づきたい。
キミと話がしたい。
でも、実際は何のアクションも起こせない臆病な自分
休み時間も教室の隅で一人動かないツマラナイ自分
対して、キミは高嶺の花だった。
来る日も来る日も、こっそりひっそり
僕はキミを盗み見る。
キミの姿が視界に入ると心臓がドクンと音を立てる。
あぁ……相変わらず僕はキミが好きみたいだ。
陶器のように白く滑らかな肌にかかる艶やかな黒髪
皺一つない白い半袖のワイシャツに滑る滑らかな黒髪
キミの髪はとても印象的だった。
僕も、周りの人も皆
キミに 黒 という背景を見た。
底の知れない深い黒
全てを飲み込む黒