それでも俺と付き合うようになって、ちょっとだけ嬉しくなったのが、澤口さんの眉毛が手入れされるようになったこと。


まだまだ全然地味なんだけど、俺のために少しはかわいく見せようとしてるのかな。

そうやって彼女が頑張っているところを想像すると、俺も嬉しくなるし、やっぱりかわいいなって思う。


秋になり、神社のベンチの足元にも風が吹くと、枯れ葉がかさかさと音を立てる。今日は波も荒いみたいだ。


澤口さんは小説を読んでいた。俺もスマホを取り出す。

冬になると雪が積もるから、自転車では学校に通えなくなる。つまりここにも来れなくなるんだ。


この人はそういうことわかってるのかな。


……だめだ、俺から前に進まないと。


「ねえ、これから衣里って呼んでもいい?」

「えっ?私を……?」


澤口さんは肩をびくっとさせた。


……他に誰がいるんだよ。