「いく兄、泣いてるの?」

俺は二段ベッドの下の段で、うつ伏せになっている。


一人になりたかった。

ここに来るまで胸がしくしく痛むのをずっと抑えていた。普通に振る舞うのだってもう限界。


だけど名菜がそこにいるせいで、まだそれを我慢していないとならなくて、顔の下にある枕を噛んでいた。


「名菜、兄ちゃんのとこ行って」


「やだ。だって松川さんが言ってたもん。わたしが兄ちゃん達のお助けマンになるの」


小さな名菜には俺の気持ちなんてわかるはずがないのに。


「……名菜は俺と兄ちゃんとどっちが好き?」


小学生の妹になんて質問をしてしまったんだろう。

うーんと名菜が唸っている。


だけど名菜の出す答えなんて予想がつく。

万が一兄ちゃんの方が好きだとしても「どっちも好き」なんて言うんだろう。