「いっくん、私ね、史弥くんが好きなんだ。小学校のときからずっとなんだよ。

……彼女っていつからだったんだろう。

史弥くん高校生だし、やっぱり体の関係だってあるんだよね……


私が史弥くんを想っているときに、史弥くんは私の知らない人と……


そういうことをしてるんだ……」


怜香が階段の途中で足を止めて、泣き出してしまった。


怜香の気持ちはわかっていたはずなのに、それを言葉にされると、思った以上にこたえた。


兄ちゃんが彼女とやってるところを怜香は想像していて、その時の怜香のやりきれない想いと、そして俺がそのことを嫌だって思っていることが胃の中で黒い渦を巻いていく。


そして止まっていた俺の思考回路が再び動き出したときに、自分の身体の全身に力が入っていることに気づいた。

目の前で好きな人が泣いているのに、俺は自分をなんとか保とうとしていることに精一杯で。


それがまた情けなくもあり、悔しいと思った。