またいつもと同じように気持ちよさそうに寝るたまくんを見て、祐ちゃんがはあ、と大きく息を吐く。

あ・・・・・・

ふふ、あれ、寝癖かな。

ぴょこんって、一束だけ立ってる。

かわいいなあ・・・たまくん。

たまくん、だなんて呼んじゃってるけど、実はそれほど親しくない。

クラスメートなのにたまくんは上手にクラスのみんなと距離をとる。

なじめてないわけでもないし、なじんでいるわけでもない。

いつも当たり障りのない位置にいる。

とびっきり目立つわけでもなく、とびっきり目立たないわけでもない。

つまり、普通なのだ。

そんなたまくんには唯一気を許せる人物がいる。


「きゃ───っ!!」


女子の色めき立った黄色い声のもと颯爽と現れたのは、“王子”だ。

相変わらずすごい人気だな、王子・・・。


「今日も爽やか」


なあーんて、祐ちゃんまで目をハートにしちゃってるし。

そんなにいいかなあ、王子・・・。

私は、たまくんの方がいいと思うけどな。

そんなことを思っていると、王子がこっちにやってきた。


「今日もかわいいね、希々ちゃん」

「あ、ありがとう・・・滝沢くん」

「滝沢くんだなんて水くさいなあ。俺たちの仲じゃん」