でも、祐ちゃん帰っちゃうんだよね。

だったら私も帰った方がいいんじゃないかな。

そんなことを思ってると、王子が私の手を取った。


「希々ちゃんは大丈夫そうだね」


そう、力強く言われた。

"帰らないで"とでも言われているようで、私は思わず頷いた。


「ちょっと、希々に変なことしないでよね!」


祐ちゃんは、王子から私を引き離して抱き締める。


「しないよ、しないって」


なあんて、王子は笑ったけど。

さっき私を掴んでいた手は、なにかを訴えるように強かった。

そのあと、誰にも聞こえないような小さな声で王子は呟いた。


「俺はね・・・」

「?」


当然のようにその声は誰に届くこともなく、この空間に溶けて消えた。


***


祐ちゃんを見送ったあと、王子が冷蔵庫からお酒を取り出した。


「えっ、これ、お酒だよ!?」


びっくりする私とは真逆に、たまくんはそれを開けて飲み始めている。

ええ───・・・た、たまくん・・・。

私がぽかんと目を丸くしていると、たまくんがさっき作ったばかりの料理を2、3品、テーブルへと並べた。


「ご自由にどうぞ」


たまくんはそう言って私の隣に座った。


「たまくん、よく飲むの?」