空がひときわ明るく光ったあと、轟音。


バチン、と蛍光灯が消えた。


もしかして、これは……。


「……停電、みたいだね」


左斜め前から、テノール。


あの日と同じ台詞。


『いつのも席』を意識しなくなったのはいつからだったか。


その席に誰か座っていることすら気づいてなかった。


座っている人はいつも、彼以外の『誰か』だったから。


でも、今日は違う。


この声は……。


「そう、みたいね」


高鳴る心臓をもてあましながら、あたしも同じ言葉を。


湿度の高い空気。


空を翔る閃光と、鳴り止まない雷鳴。


あの日と違うのは、過ぎ去った時間だけ。