「い…今の、ウサギ?どこからか逃げてきたのかな…?」

気になった私は、バラ園の迷路へ入っていきました。



 辺りもすっかり暗くなり、バラの壁と木々の葉で月の光も入ってきません。
戻るにも暗い所為で来た道が見えません。

「追いかけるんじゃなかったー!もー!」

地団駄を踏んでいると、ピョンとまたあの白いウサギが出てきました。
暗い所為か、白い毛が目立ちます。
私の方をじっとみていて、一歩進むとウサギも進み、
追いかけてくるか待っているようでした。

「案内してくれるの?」

ウサギはただ私の方を見て耳を上げたり下げたりするだけです。
ゆっくり私は歩き始めました。
それに合わせてウサギもピョンピョンと跳ねます。
時々後ろを振り返り、まるで私がいるか確認しているようでした。

「頭良いね、君」

ウサギは止まって耳を上げました。

「嬉しいの?」

ウサギはまた前へ進みます。
クスクスと私は笑いました。
そして迷路の突き当たりに出ました。

「行き止まりだよ?」

そういうと、ウサギはバラの壁へ潜り込みました。

「どうするの?こっち?」

私はしゃがみ、ウサギを目で追います。
するとウサギが入ったところは、人一人が通れそうな道になっていました。

「これ抜け道?すごいねー」

私も早くこんなところから抜け出したかったので、
迷いもせずにその空間へ体を潜り込ませたのです。
壁を抜けると、小道に出ました。
ですが、ウサギの姿はありません。

「あれ?ウサギ何処行った?」

仕方なく道なりに私は歩きました。迷うことはありません。
小さな広場のような空間が現れました。
そこはツタの薔薇のアーチと屋根の空間です。
子供用くらいのテーブルとチェア、テーブルの上にはティーセットです。

「可愛いー!ウサギといいバラ園といい、ティーセットまで…まるでアリスのお茶会みたい!」

ふと振り返ると、チェシャ猫のような猫がこちらを見ていました。