その後、いろんな検査を終え、しばらくして医師が伝えた言葉は


「記憶喪失です」




原因ははっきりしませんが、頭を強く打っていたのでしょう。

検査の結果、外傷は認められなかったものの、何らかの衝撃により脳の記憶を残している箇所に影響を与え、途切れてしまったと思われます。


人によって様々ですが、

相沢さんの場合、

言語や知識的な部分は正常ですが、

人や想い出、自分自身のことの記憶がないようです。






そう、説明された。



説明された意味はわかる。


日本語も知識もあるから。


理解する力は残っていたみたい。



今、私はベッドに横になり、天井を見つめてる。



医師の言葉を頭の中で何度も響かせながら。




「これといった治療方法はありません。」


ただ、記憶というのは枝のようにいくつも分かれて一つの木になったようなものなんです。

あなたは記憶存在が全て消えたわけではないので、うまく枝がついてくれれば思い出す可能性はあります。


いろいろ想い出を巡ってみることから始めましょう。




……想い出、一つも残ってないなんてね。