「あの……私」
そう、か弱く発した声と共に、医師と看護婦らしきパタパタと急ぐ足音が聞こえてきた。
凄い勢いで顔を覗き込んでいた女性は急に立ち上がるとその音の方へと離れてしまったため、私の声は行き場をなくし薬臭い空間にプカプカ浮かんでは消えていった。
医師が私の顔に手をやる。
「意識が戻ればもう大丈夫。
どこか痛いところはない?」
「足が……」
「ああ、足は骨が折れてるからね。痛みはあると思うよ。
あんまり酷くなるようなら痛み止め用意するからすぐ言って下さいね。」
「はい。」
そんな会話をしても、まだ私の頭の混乱はおさまらない。
「他は大丈夫かな?」
他は、大丈夫??
大丈夫なわけない。
私は頭が混乱して聞きたいこともいっぱいで、何から言葉を発したらいいのかさえもわからないでいる。
足を骨折って何?
なんで此処にいるの?
隣でほっとしている女性は誰?
それよりも……私は誰?
言葉が出ないまま、医師はこの場を立ち去ろうとしていた。
隣にいた女性に
「もう大丈夫ですよ。」そう告げて。
だから何が大丈夫なんだろう?
「よかった………」
何がよかったのだろう?
わからない………
わからないよ!!
誰か…………早く私を教えて………