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「ねぇねぇ?」


無邪気なその声にゆっくり振り向く。


「ねぇ、おねぇちゃんはどっか悪いの?」


幼いこの男の子に私は静かに答えた。


「うん、そうだよ。」


「ふ~ん…僕はね」


自分から聞いたくせに、興味なさそうにそう答えた彼は、風邪で寝込んだ友達のお見舞いにお母さんと来たこと、早く良くなればいいなと毎日お祈りしてること、元気になったら一緒にカードゲームの続きをすること(負けのまんま中断してるらしい)、そんなことを聞きもしないのにあれこれ話していった。

「そっか。君、優しいんだね」

と微笑むと
彼は笑顔をやめて真剣な眼差しでこちらを見つめてきた。


不思議そうに見つめ返すと


今度は満面の笑みで
「おねぇちゃん、やっと笑ったね♪」


その言葉ではじめて気付いた。





窓の外では太陽が一日の最後の瞬間を赤々と燃え盛らせていた。

彼の純粋な目から反らした顔が夕日に染まる。

私はいつから笑ってなかったっけ?

いつから悲しみを諦めたのだろう?

いつからか…

あの日からはじまる私の記憶は…はじまった瞬間から淋しさを連れていた気がするよ………





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