「……は、」
しばらくの沈黙を切ったのは
光の漏らした小さな声だった。
「……何それ、
お前、いま俺のこと振った?」
まるで信じられないみたいな声色で
私に問いかける光。
「うん、そうだよ。もう光とはやり直せない」
ぴくり、と
光の口角が引きつったのが見えた。
「何お前、いつの間にそんなに生意気になったわけ?
昔は俺にリードされてばっかだったくせに。
あーあ、まじやってらんねぇ。お前に振られるとかまじ無いから、今の取り消しね」
手のひらを返したように態度が違う。
しかも、以前から知っている光でもない、
私の知らない光だ。
やっぱりこいつ、本性隠してたんだ。
「今の彼女に飽きちゃってさ、
たまたまお前のこと思い出して。ちょっと遊んでやろうかなーって思ってたけど、
やっぱお前みたいなやつ抱きたくねぇわ」
「っ__!」
怒りがこみ上げてきて、
光に掴みかかろうとした。
だけどそれを実行できなかったのは、
掴みかかろうとした腕を
後ろから誰かに抑えられたからだ。
そしてそれが誰か、なんて。
空気でわかってしまった。