「ごちそうさまでした。」
「お前、すっごい幸せそうな笑顔してんな。」
凛音は美味しいものを食べると、最上級の笑顔を見せる。笑顔はまだあどけないような17歳の顔。一見無垢な少女のように見える凛音を見て、倉科は苦い笑みをこぼす。
「じゃ、そろそろ帰るか。」
「やだ。」
「は?」
「今日は帰らないってお母さんに言ってきた。」
実際は無垢な少女でもなんでもないのに。
「とりあえず、店出るぞ。」
レジで倉科が財布を取り出す。凛音は鞄に手をかけようともしない。しかしその姿を見ても倉科が不快な顔をすることは無い。店員にもよく親子に見られる2人が割り勘なんかで支払ってたら、それこそ不思議に思われてしまう。それに、凛音はアルバイトもしていないのでお金もお小遣い程度しかない。デートだって頻繁にしているわけではないし、ここは社会人の倉科が出すのが普通だろう。
「行くぞ。」
会計後、再び車に乗り込む。