「ほい。ここでいいかい?」
「パスタがあればいい。」
学校から直行してきたスーツの倉科と黒のワンピースの凛音。傍から見れば普通の恋人同士に見えるのだろうか。それとも、少しおめかしした娘と会社帰りの父に見えるのか。大抵は後者であろう。しかし周りからどう見られるのかは2人にとってさほど重要ではない。どちらにせよ、親子でもないし、普通の恋人でもないのだ。
凛音はパスタと小さなケーキ、甘いものが苦手な倉科はパスタだけを頼んだ。
「めっちゃ美味しい。」
「そりゃよかった。」
「ケーキ食べないの?」
「甘い物無理。ワイン飲みたい。」
「飲酒運転とかやめてよね。」
「流石にしねえよ。」
会話もそこそこに、料理を全部平らげた。