5時30分を回った頃だろうか。気づいたら教室に残っていた生徒はみんないなくなっていた。目の前には、日誌のようなものに何かを書き込んでいる倉科直樹。
「倉科先生。」
「何。お前部活は?」
「部休日。先生お仕事いつごろ終わるの?」
「あー。7時くらい。」
「ふーん。じゃあ私、帰るね。」
「待っててくれるんじゃないの?」
「まさか。」
「8時に迎えに行く。」
「待ってる。」
凛音はロッカーの中から参考書を取り出し、それをバックに詰め込んで教室を後にした。
不自然すぎるこの会話は、2人の関係を物語るのには充分だった。